静岡名物「静岡おでん」
寒さも一段と厳しくなってきました。今回は寒い冬の定番料理「おでん」の中でも、郷土料理として面白い「静岡おでん」のお話です。
おでんという和食に関しては、第16回にお話ししました。おでんは関西地方の「関東煮(かんとだき)」を含め全国で楽しまれていますが、その中でも「静岡おでん」は郷土料理としても有名です。
静岡おでんには「スープが黒い」「食べるときに『だし粉(魚を粉末にした粉)』と『青海苔』をかける」という点が、一般のおでんと大きく違います。おでんの出汁というと普通は昆布や鰹節を使い、やや黄色い透明なものが多いのですが、静岡おでんは真っ黒なスープで底が見えません。もちろん昆布や鰹節の出汁も使っていますが、濃口醤油でしっかり味付けされています。また、これも静岡おでんの特徴ですが牛スジや豚のモツなども具材に入るため、魚介類だけではなく動物性油脂のコクや旨味が加わっています。写真①は地元でも有名な静岡おでんの老舗「海ぼうず」のおでん鍋の様子です。スープの色を見てください。真っ黒ですよね。食べてみると、味か濃くご飯のおかずにもなりそうです。ただしょっぱいだけではなく、独特の甘みも感じられます。これはおそらく牛や豚の旨味のためだと思います。
特長的な具材に「黒はんぺん」というものがあります。東京では「はんぺん」というと真っ白でふわふわしたものを想像しますが、黒はんぺんはサバやイワシなどの魚を丸ごとすりつぶしたもので、私の知る「つみれ(イワシのすり身団子)」と似た食材です。食材自体やや灰色ですが、それを真っ黒なスープの中で煮込むので、まさに「黒はんべん」といわれるように黒いものになります。
写真②は、黒はんぺんをいろいろな方法で調理したものです。左から「茹ではんぺん」「焼はんぺん」「おでんのはんぺん」「揚げはんぺん2種」となります。そもそもは一番左のような色ですが、おでんのスープで煮込むとご覧のとおり黒くなります。
食べるときにかける「だし粉」も、静岡独特のものです。静岡では、このだし粉をおでんだけではなく、煮物やおひたしなどにも使います。静岡県のB級グルメとして殿堂入りしている「富士宮焼きそば」も、だし粉をかけて食べます。まさに静岡県民が愛する粉ですね。
お酒のつまみにもご飯のおかずにもなる「静岡おでん」。皆さんぜひ一度味わってみてください。
【写真①】真っ黒なスープ
【写真②】黒はんぺんの数々