米食と麦食


 和食の基本は「お米」です。和食はお米を美味しく食べる料理とも言えますね。それに比べて洋食の主食はパンやパスタなどの「小麦」製品が主流です。今回はこの米食と麦食の食文化を比べてみましょう。

 小麦は畑で作られます。化学肥料などがなかった古代では、一度麦を収穫すると土壌の栄養分がなくなるため、その畑はしばらくお休み(休耕)する必要がありました。そこで古代人は休耕地で羊や牛などの家畜を飼うことを思いつきます。家畜は雑草を食べてくれるし、その糞でまた畑に栄養分が回復するからです。こうして小麦を食べる食文化には家畜の肉や乳製品などが一緒に食べられるようになります。つまり小麦食文化はその起源から肉食・乳製品とセットで進化してきました。これが現代の洋食文化のルーツです。

 それに比べて米は水田で栽培されます。米を作るには水が不可欠です。稲の栄養分は川から引いた水に溶けているので休耕の必要はありません。田んぼにつながる川には鮒や鮎、沢蟹、田螺(たにし)などの水棲生物が一緒に収穫されます。また田んぼの畔にはさまざまな野草が生い茂るため、米食文化は魚や貝類、野菜とセットで進化してきました。この起源が和食に魚や野菜が多く使われる理由の一つと考えられています。

 麦はその粒が小さく、殻をむくことが困難なため、粉にして食されてきました。粉に水などを加えて練り上げれば、パンやパスタ、ピザやうどんなど加工が簡単です。それに比べて米は籾殻を外すのが容易なため、粒のまま調理する粒食が主流になります。また、精米の際にでる米ぬかを漬物の漬け床に使ったり、稲わらで草履を編んだりと、余すことなく使用する知恵が発達してきました。

 日本では約3000年以上前の縄文時代後期から稲作が始まりました。日本人は3000年以上もお米を食べて生活しているのです。パンの起源はもっと古く、約6000年以上前のメソポタミア文明において小麦粉を水で溶いて焼き固める製法が確立し、その後古代エジプト文明ではすでに発酵させたパン作りがされていたようです。

 文明が進化し、どこの国でも何でも食べられる時代になりましたが、私たちの日本人の先祖が3000年以上も米を主食にしてきた記憶は深くその身体やDNAに刻み込まれています。日本では僅か50年前まではほとんどの家庭でご飯が主食の生活をしていましたが、最近では和食離れが進み、ご飯を炊かない家庭も増えています。食生活は人々の健康に直結する文化です。やはり日本人はお米を食べて健康で長寿に過ごせるのではないでしょうか。

 今日は、ご飯を炊いて漬物とお味噌汁の食事をしてみませんか?

麦は粉にして加工します


米は粒のまま調理されます